コラム 「商店街と暮らしとマルシェ」臼井彩子 第3回


第3回 地域の魅力をつくる

2020年7月31日


商店街が行うイベントの役割は、まずはお店のPRや売上に繋がる事だが、その他にも様々な役割を担う事ができると考えている。

前回紹介した黄金町のマルシェでは、ここ数年、横須賀や三浦のお店に出店してもらう機会が増えている。関係者の繋がりから始まり、昨年はイベントの特徴の一つとして積極的に参加を呼びかけた。

どちらの地域も京浜急行線沿線のため、お互いのエリアでイベントをPRする事で、それぞれの地域を知ってもらい集客に繋げるという効果を期待して取り組んでいる。

実際に、昨年の来場者アンケートでは、横須賀からの来場者が見られたことも分かっている。


常連の来場者からは、遠方のお店の商品が買える機会として喜んでもらえる。また、地域の外からの目線でイベントに出店してもらうと、内側からの目線では気づかなかったような地域の魅力を教えてもらう事も多い。地域の外と連携していくことで、相乗効果が生まれている。



画像:横須賀や三浦からの出店が集まったマルシェ会場



マルシェは一時的な販売機会ではあるが、定期的な開催を行う場合は、テストマーケティングの場として活用することもできる。商店会が主催する黄金町のマルシェでも継続的なイベント出店が、新規開業のきっかけとなった事例が出ている。

今年新たに商店会の加盟店に加わった「Farm Deli & Bar by yokohama vegemate project」。このお店は、2016年からマルシェに出店していた「ヨコハマベジメイトプロジェクト」が運営する農家直営の野菜のデリと自家製ドリンク専門店だ。


ヨコハマベジメイトプロジェクトは、横浜市内各地で、農薬や化学肥料にたよらず環境共生・自然循環型農業に取り組む複数の農家とその支援者の料理研究家らのチームで、市内各所のマルシェなどで販売やイベントなどを行ってきた。

なぜ、この地域に実店舗を開業することになったのか、ヨコハマベジメイトプロジェクトの小出さんに話を伺った。


画像:ヨコハマベジメイトプロジェクトの野菜 


画像:ヨコハマベジメイトプロジェクトの店舗




地域のマルシェに出店することで、「地域の潜在需要と商品がマッチしている事」「宣伝によって集客が出来るエリアである」という2点が分かったと小出さんは話す。この2点は、マルシェを企画するに当たって常に意識していることでもある。

まずは人を呼ぼうという目的のイベントでもあったが、継続する中で地域全体の魅力づくりを意識することに繋がり、変化も見えてきている。

地域に必要とされる魅力的なお店が増えることで、街に住む人の暮らしはより豊かになる。

そのための方法はイベントだけではないが、一つの取り組みとして地域に根ざした「マルシェ」の可能性をこれからも考えていきたい。







臼井彩子

食や地域のつながりをテーマにイベントを開催しているプロジェクト「パンとコーヒーマルシェ」主宰。地域の人、生産者、地域を担う商店などとの繋がりの中で、それぞれの魅力を発信していくことを目的として活動。学生時代より黄金町の取り組みに関わり、初黄日商店会のローカルマルシェ「はつこひ市場」をスタート。「黄金町パンとコーヒーマルシェ」などイベントの企画運営を担当している。